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『友達でいられるなら』を再び絶賛する。(ときめき研究家)

島崎、横山のデュエット曲『友達でいられるなら』の感想を書き足りなかったので、追加で書きたい。

島崎も横山も私の特に好きなメンバーではない。しかし、この曲のパフォーマンスは素晴らしく、今回のアルバムで最高の曲だと認めざるを得ない。

歌詞は、普通の学生のラブソングだ。
グループで遊びに行った帰り、たまたま同じ方向に帰る2人が意気投合して、恋に落ちるという内容だ。恋する気持ちが芽生えて、急速に大きくなっていく時のスピード感、自分でコントロールできない速度で落ちて行く怖いような感覚が見事に表現されている。好きになるのが「いけないことだったのか?」と悩んでいるのは、グループ内に「恋愛禁止条例」でもあるのだろうか。それとも彼女が別の先輩と付き合っているからなのか。そんな想像の余地があるのも良い歌詞だ。

しかしこの曲の聴きどころは、やはり島崎、横山2人の声と歌唱の絶妙のコンビネーションだろう。
島崎の頼りなげな歌唱はますます磨きがかかっている。『永遠プレッシャー』で「私に期待しないで」と歌ってから2年経っても、一向に期待値が上がらないのが素晴らしい。以前のソロ曲『動機』の虚無的な歌唱も曲に合っていたが、今回も一層脱力している。
歌い出しの「ともだちでぇ いられるならぁ」から、一節ごとに息が続かない感じは、肺活量が足りないのか、自信が足りないのか。それを過剰なエコーで補っているので、本当に息も絶え絶えで、歌い終えたら倒れてしまうのではないかと心配になる。絶品だ。

一方で横山は、鉄面皮の学級委員長のような声と歌い方で、島崎と好対照だ。「赤い血を流しても」など過激な歌詞にも余計な感情を込めたりせず、学級会の司会をするように平然と歌っている。そのコントラストが素晴らしい。島崎と違ってエコーはほとんどかけず、中音の自然な伸びを生かしている。そこには京都の古寺の菩薩のような母性すら感じる。

この凸凹コンビの組み合わせは奇跡的だ。
それぞれの個性が対照的な個性と対峙することで、お互いに引き立たせ合い、聴き手にスリルめいた興奮を惹起する。甘いおしること塩昆布の組み合わせのようだ。何回聴いても飽きない。
そもそもこの歌詞はデュエット用の掛け合いではなく、男の視点一方から書かれている。この曲をこの2人のデュエットにしようと考えたのはどういう経緯か知らないが、最高のアイデアだったと思う。誰か1人のソロ曲であったとしたら、ここまでの興奮はなく、普通の「いい曲」で終わっていただろう。

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