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Channel: AKB48 チームBのファンより
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渡辺麻友『出逢いの続き』とカップリング曲を聴く。(ときめき研究家)

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ドラマ『戦う!書店ガール』の主題歌で、渡辺麻友5枚目のシングルだ。
4枚目『ラッパ練習中』から、2年もブランクが空いた。ドラマ主演の話がなければこのシングル発売もなかっただろう。アイドルの2年間は貴重な時間だ。その間には、AKB48のアルバムでソロ曲(『純情ソーダ水』)があったりもしたが、もっとコンスタントにシングルを出してほしいものだ。
ソロ歌手としての魅力があるのだから、柏木由紀のようにソロコンサートも開催してほしい。

『出逢いの続き』。
凛と張り詰めたようなメロディーに、麻友の硬質で透明な声がマッチして、緻密な世界を構築している。ピアノだけの伴奏に合わせて歌い始める麻友の声は、繊細なガラス細工のようだ。
ドラマの主題歌としても非常にマッチしていたし、今の麻友によく似合っている曲だと思う。
また、歌うのは相当難しい曲だと思われるが、「ミュージック・フェア」での生歌は、CDよりむしろ力強く、上手に歌えていたと思う。麻友の歌手としての才能を改めて認識した。
歌詞は、運命的な出逢いを歌ったもので、曲調によく合っている。ただ、やや理屈っぽいきらいがある。特に、冒頭の「出逢いの中で続くものって 未来のために選ばれたもの」という一節は、「もの」という名詞の使い方が説明的で、詩的でないのが惜しい。
この歌の主人公は、少女ではなく大人の女性だ。美少女だった麻友も二十歳を過ぎ、すっかり「きれいなお姉さん」だ。社会人役でドラマに出ても違和感がなく、だから歌の中でも歳相応の世界を歌うことになったのだ。これはこれで魅力的だが、美少女の歌ももっと聴きたかったという寂しさもある。2年間のブランクが惜しいというのは、こういうことだ。


『紛らしている』。
カップリング曲で一番印象的な曲だ。
ハードロック調の曲で、シャウトしている。発声の前に息を吸う音がハッキリと聴こえる。斜に構えたような、べらんめい調の巻き舌。麻友のこんな歌い方は初めてだ。何という引き出しの多さよ。
ところが、そうして歌われる歌詞は、一方的な片思いにいじいじと悩んでいる幼い女の子の歌で、歌い方とのギャップが大きい。そのギャップがこの曲の狙いなのだろう。
自分の臆病さを紛らすためにテレビをつけているという設定は、孤独を紛らすためにテレビを消音でつけているという『音を消したテレビ』とも通じるものがある。


『夕暮と星空の間』。
タイトルがいい。日が落ちて、完全に暗くなるまでの時間のロマンチックなムードを想像させ、どんな曲なのだろうと期待させる。
シンプルな和音の伴奏に合わせて、美しいバラードが始まる。
歌詞に耳を傾けると、夕暮れのバス停で彼女と別れて、暗くなるまでそのバス停で独り立っている男の歌だ。いや、更によく聴くと、彼女と別れたのは何年か前のことで、現在の男は同じバス停を訪れて、彼女との恋を思い出していることが判る。時制が交錯した、重層的な歌なのだ。
彼の後悔はよく判る。共感できる。なぜあの日、バスに乗る彼女を引きとめなかったのか。何かをしてしまった後悔よりも、しなかった後悔の方が大きいというのは真実だ。もし引きとめていれば、その後星が見えるまでの長い孤独を感じることもなかったし、毎年未練がましく同じバス停を訪れることもなかった。
切なく苦い男のセンチメントを、麻友の透明で硬質な声が、どうしてこんなにリアルに表現できるのだろう。淡々と続く美しいメロディーは、どうして聴き手の胸の奥深くに眠った悔恨を呼び覚ますのだろう。私もまた、今も夕暮と星空の間にいる。
歌詞の最後の「インターミッション」という言葉の選択だけが残念だ。辞書を引くと「中断」「休止」「幕間」などの意味があるようだ。夕暮と星空の間の時間、彼女と別れた日から現在までの時間、その両方を指しているのかと思われる。しかし、曲の最後に、スッと頭に入ってこない英単語を選ぶのは効果的とは思えない。


『横顔ロマンス』。
彼と初めてドライブに誘われ、助手席から見る彼の横顔にときめいている歌だ。
少女の素直な感情が歌われていて、気恥ずかしくなるくらいだ。
2人はまだ付き合っているとまでは言えない状況で、微妙なぎこちなさや戸惑いが細やかに描かれている。「誘ってくれた理由が知りたくなる 気まぐれだと言われても嬉しいよ」の「嬉しいよ」の語尾が、麻友独特のニュアンスでキュンとなる。媚びるのでなく、言い放つのでもない。素っ気ないけれど真っ直ぐな気持ちがこもった「嬉しいよ」だ。こんな歌い方を他に聴いたことがない。
恋人と2人でドライブする歌は、実は80年代が最も多かった気がする。
最近は若者の「車離れ」が顕著で、車を買わないどころか免許も取らない若者も多いと聞く。デートはドライブするよりもカラオケボックスかクラブということになるのだろうか。
AKBグループには、ドライブの歌は結構ある。『初めてのドライブ』『女の子の第六感』『そこで犬のうんち踏んじゃうかな』『姉妹どんぶり』など。最後のドライブになりそうな歌では『Bird』『黒い天使』『愛しさのアクセル』など。AKBグループが80年代を継承しているのは、こんな所にも表れている。


『女の子なら』。
女の子ならお洒落をしようという歌。CM提携しているアベイルのテーマソングにふさわしい歌詞だ。露骨なCMソングではないが、お洒落をしたい、可愛くなりたいという女の子の気持ちを素直に歌っていて、服など買いに行こうかという気持ちにさせる。
すれ違う人が振り向くようにお洒落になりたいというのは、『コケティッシュ渋滞中』にも通じる歌詞だ。


『ラッパ練習中』発売時の記事は以下。
その1
その2
その3
その4


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