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Channel: AKB48 チームBのファンより
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作詞家三浦徳子を偲んで。初期松田聖子の作品を回想。(ときめき研究家)

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ミュージシャンや音楽関係者の訃報が相次いだ。自分との年齢も近く、自分が好きで聴いてきた音楽の作り手たちの逝去は、他人事とは思えない。
三浦徳子の最大の業績と言えば、やはり松田聖子を世に出したことだろう。
デビュー曲の『裸足の季節』から『青い珊瑚礁』『風は秋色』『チェリーブラッサム』『夏の扉』までのシングルと、アルバム『SQUALL』『North Wind』の全曲と『シルエット』のほとんどの楽曲を作詞した。トップアイドルとしての地位を獲得するまでを支えたと言える。
6枚目のシングル『白いパラソル』以降は、松本隆にバトンタッチされた。その後の多彩な楽曲により、松田聖子は既存アイドルの枠を超えた存在になった。なので松田聖子といえば松本隆という印象が強いが、デビュー後約1年半の三浦徳子による基礎があってこその、松本隆の応用・発展だったと考えている。強引に例えるなら、三浦徳子作品で160キロのストレートを投げられるようになり、その後松本隆作品で七色の変化球を身に付けた、そんな感じだ。

三浦徳子の歌詞は、しかし王道アイドルの正統的な歌詞かと言えば、そうでもない。どこか引っ掛かりのある、おかしなところもある歌詞なのだ。
『裸足の季節』では、出だしの「白いヨットの影」の「ヨット」が早口で妙に耳に残る。サビは「えくぼの秘密あげたいわ」という伸びやかな歌唱が印象的だが、「えくぼの秘密」とは何か? 洗顔フォームの商品名を強引に歌い込んでいるのは分かるが、謎めいた歌詞だ。
『青い珊瑚礁』では、冒頭サビ部分「あー私の恋は」が強烈に印象的だが、直後に「南の風に乗って走るわ」「青い風切って走れ」と、「恋」を擬人化し、かつ「風に乗れ」「風を切れ」と2つの違う命令をしていて混乱する。語感はとても良いし、意味よりもメロディーに合っていることを優先した歌詞なのだ。
アルバム『SQUALL』収録の『9月の夕暮れ』には、「銀杏並木 鮮やかな色」という歌詞があるが、銀杏の葉が色づくのは通常11月だから不正確だ。これもイメージ重視の歌詞と言える。
もう1つ。アルバム『North Wind』収録の『North Wind』には、そっけない彼の態度に「そうよそんなところも好きになった原因だから」という歌詞があり、「原因」という言葉に違和感があった。普通なら「理由」だろうが、メロディーには「原因」の方が合っている。
そういう小さな引っ掛かりはありながらも、歌いやすく、聴きやすい、メロディーに良く合った歌詞ばかりだったと思う。

松田聖子の初期楽曲の中で私が一番好きなのは、『チェリーブラッサム』のB面曲『少しずつ春』だ。もちろん作詞は三浦徳子だ。
過去記事でも書いたことがあるが、私が大学生だったころ、FM東京の番組『松田聖子のひとつぶの青春』の「聖子と電話でデート」というコーナーに出演し、3分ほど「デート(お話)」をした後、リクエストした曲だ。松本隆の手がまだ入っていない、基礎ポテンシャルが高いまま、がむしゃらに歌っている感じが素晴らしい。また、「月日はいたずらな子供みたいに冷やかし半分見ている」とか「木立が緑の会話をしはじめる」とか、三浦徳子お得意の擬人化もある。まだ2月なのに「緑の会話」というのも早すぎて、三浦徳子らしい。
ちなみに、3分間の「デート」の中で、カラオケではどんな歌を歌うのかと聖子に尋ねられ、1フレーズ歌わされたのが『君に薔薇薔薇・・・という感じ』だった。その曲も奇しくも三浦徳子作詞だった。

ネットで見つけた「オリコンニュース」の記事から、三浦徳子作詞曲の売り上げトップ15を引用する。ミリオンこそないが、間違いなく80年代を代表するヒットメーカーの一人だった。
1位…杏里「キャッツ・アイ」(1983年8月5日発売) オリコン週間シングルランキング最高1位、累積売上82.0万枚
2位…松田聖子「風は秋色/Eighteen」(1980年10月1日発売) 最高1位、累積売上79.7万枚
3位…松田聖子「チェリーブラッサム」(1981年1月21日発売) 最高1位、累積売上67.5万枚
4位…松田聖子「青い珊瑚礁」(1980年7月1日発売) 最高2位、累積売上60.3万枚
5位…八神純子「みずいろの雨」(1978年9月5日発売) 最高2位、累積売上58.8万枚
6位…松田聖子「夏の扉」(1981年4月21日発売) 最高1位、累積売上56.9万枚
7位…八神純子「パープルタウン」(1980年7月21日発売) 最高2位、累積売上56.4万枚
8位…工藤静香「嵐の素顔」(1989年5月3日発売) 最高1位、累積売上52.4万枚
9位…田原俊彦「君に薔薇薔薇…という感じ」(1982年1月27日発売) 最高3位、累積売上36.5万枚
10位…沢田研二「ス・ト・リ・ッ・パ・ー」(1981/9/21発売) 最高6位、累積売上36.4万枚
11位…吉川晃司「モニカ」(1984年2月1日発売) 最高4位、累積売上33.9万枚
12位…シブがき隊「ZIGZAGセブンティーン/Gジャンブルース」(1982年10月28日発売) 最高5位、累積売上33.5万枚
13位…松田聖子「裸足の季節」(1980年4月1日発売) 最高12位、累積売上28.3万枚
14位…岩崎宏美「万華鏡」(1979年9月15日発売) 最高10位、累積売上27.8万枚
15位…郷ひろみ「お嫁サンバ」(1981年5月1日発売) 最高6位、累積売上27.3万枚

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