Quantcast
Channel: AKB48 チームBのファンより
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2446

第5回総選挙雑感(読者からの投稿その1)

$
0
0
第5回総選挙雑感(読者からの投稿その1)

折しも、重厚で閉鎖的な雰囲気の日本武道館から、ワールドカップ決勝の舞台となったオープンな日産スタジアムに場所を移した第五回選抜総選挙は、この移転が象徴するような劇的な変貌を遂げたように思う。
少女たちが、真剣に斬り合い、血を流す、見るも痛々しい壮絶な審判の場から、おおらかで華やかな祝祭の場への変化と言えようか。

もちろん、総選挙が1年間の彼女たちの活動、努力が冷厳に定量化され、序列化される厳しい審判の場であることには変わりないが、フジの中継で見た限りでは、昨年までの選挙と比べて、一人ひとりの表情はリラックスして、スピーチのトーンもカジュアルで肩の力が抜けたものが多かった気がする。
様々な要因があろうが、広大な日産スタジアムの開放的な雰囲気も、彼女たちに好ましく作用したのではないか。

昨年の第四回総選挙は、絶対エースである前田敦子の抜けたポジションを誰が埋めるのか、ライバルと目された大島優子が順当に跡を襲うのか、前田票はどこに流れるのか。これを追うのは渡辺麻友や柏木由紀なのか、はたまた世代交代を目するさらに若い世代なのか。
前回までと同様に、この選挙の序列そのものに、世間一般も、そして本人たちも神経を尖らせ、それが会場での張りつめた雰囲気、表情、そして多くの気丈なスピーチに表れていた。

高橋みなみの「努力は必ず報われる」、「トモもここにいていいんだ」板野友美の切々とした心情の吐露、小島陽菜の「私も一押しにしてください」という可愛くも切実な訴え、そして、圧巻ともいえる篠田麻里子の「つぶしに来い」発言など、昨年の総選挙は、ベテラン組を中心とした、順位に対するこだわり、意地、プライドが火花を散らした、「闘い」の場であり、本職の政治家をもうならせるほどの名スピーチのオンパレードとなった。

柏木由紀を凌駕しながらも一歩届かなかった渡辺麻友や、ついに松井玲奈を超えてベスト10入りは果たしたものの神7の壁に跳ね返された松井珠理奈など、篠田の檄を真剣に受け止め、いよいよトップ狙いを言葉にあらわした新世代の「闘志」も、AKB第二幕の幕開けを感じさせた。


そして、第五回。
世代交代がどんな波乱を呼ぶのか、に世間の耳目は集まったが、終わってみれば「指原に始まり、指原に終わった」総選挙だった。

「つぶしに来い」という篠田を、勝手につぶれてもおかしくないヘタレの指原がするりとかわして4位に入り、フジテレビを喜ばせたのもつかの間。
「調子に乗るな」とばかりに、渾身の力をこめて過去のスキャンダルをあげつらってつぶしにかかって来た週刊文春の記事で、HKT移籍が決まったのが、総選挙からわずか1週間後の6/15だった。
栄光から奈落へ、もう指原も終わったか、と思われた。

それからの彼女の苦闘と再起、努力は、多くのメディアに取り上げられ、ドキュメンタリー映画でも一つのモチーフとして描かれたが、何よりHKT48のメンバーを盛り立て、引っ張る姿が、従来のAKBファンの枠を超えて世間の共感と信頼を克ち得たことが、今回の速報での一位、そして最終結果で、15万票の大台を超える圧勝につながったのだろう。


早くも3位に、昨年2位だった渡辺麻友がコールされ、残る二席に、ディフェンディングチャンピオンの大島優子と、速報1位の指原莉乃が残る、1年前に一体誰がこの展開を予想できただろう。

そして、あろうことか、第二位に大島優子の名前が呼ばれたとき、7万2千人の観客も、そしてテレビの前の数千万人の視聴者も、Youtubeを凝視していたオタたちも、大きくどよめいたことだろう。

2位に沈んだ大島優子の、何とも拍子抜けしたような、まさに「笑うしかない」といった笑顔がすべてを物語っている。
「いやあ、涙の一つも出ない。なんでしょうこの気持ち。おなかを抱えて笑ってしまう総選挙は初めてです」
このスピーチは見事なリアクションだったと思う。
大島優子はもともと気配りばかりする、優しい子である。
事務所の後輩である指原の活躍を祝福してあげたい気持ちも素直に持っていよう。

しかし、彼女が前回、自分を踏み台にしてもらいたい、超えて欲しいと奮起を促した若手は、決して指原ではなかった。
渡辺麻友や松井珠理奈を始めとする、若手のエースたちは、彼女の期待に応えるべく、今までになく自分を前面に出し、AKB全体を引っ張ろうという意思をみなぎらせてきた。
彼女たちに道を譲って、卒業しよう、そんなスピーチも用意していたかもしれない。

なのに、指原である。
指原は愛すべき後輩ではあるが、前田敦子と自分が争ってきた総選挙の1位を担う器か、と言えば、大島優子ならずとも、メンバーたちの誰もそうは思っていなかっただろう。
秋元康をはじめとする運営にとっても、決して望んでいたシナリオではなかったに違いない。

しかし、なんなのだろう、この気持ち。
なぜこんなに笑えるのだろう。
えっ?ここって、あの、血で血を洗う総選挙の場じゃなかったの?

この大島優子の戸惑い、そして笑いが、このシーンを目撃したすべての人を包んだ。
指原自身だって、1位は予想していなかっただろうし、謙虚な彼女は、尊敬する前田敦子や大島優子と同列に立ったなどとは夢にも思っていないだろう。

だからこそ、これまでの総選挙の持っていた重苦しい意味合い、殺伐とした雰囲気、何とも言えない後味の悪さを根底からひっくり返し、この場を、笑顔に満ちた祝祭の場に変えてしまった指原のパワーに、私は素直に天晴と脱帽した。

あの、伝説になった第二回総選挙での、アンチによる「前田、前田・・・」という呪詛、第三回総選挙での「私のことは嫌いでもAKBは嫌いにならないでください」という、前田のあまりにも悲痛な訴え、楽屋裏で泣き崩れた大島優子。
年々エスカレートし、先鋭化し、ファン同士の争いもし烈化し、誰が勝っても常に荒涼とした苦さが残る真剣勝負。

たかがアイドルの人気投票でしかない、内輪のノリだったはずの総選挙が、行きつくところまで行ってしまっていた。

前田敦子が卒業することで、このし烈な争いが緩和され、次世代の争いに焦点が移り始めた中で、他方、不動の軸を失ったAKBは、おそらく求心力も活力も低下し、明らかに下り坂を迎えるだろう、それが、私自身の第四回の時点での印象だった。
この先、AKBはどこに行くのか。どこに行けるのか。それは、彼女たちにとって望ましい方向なのだろうか。

第二の前田敦子、第二の大島優子は現れるのか。
しかし、あくまで「第二」であったとすれば、それは小粒な争いに終始し、結局はAKBが飽きられてしまうのではないか。
それでも、毎年、メンバーたちは胃の痛む、辛い総選挙をくぐり続けなければならないのか。

そんな疑念を、あっけらかんと、しかも期せずしてぶち壊してしまった指原莉乃はただものではない。
こんな生き方があったのか。
こんな風にして1位になってもいいのか。

小林よしのりならずとも、保守的なAKBファンなら、ついそうボヤいてしまいたくなるほど、あっさりと、前田や大島のル・サンチマンを超えてしまった指原。
1年前には、あわや活動辞退か、という崖っぷちに追い詰められた、決してセンターのオーラなどない、自らのソロシングルですら、後輩にセンターを奪われていた指原が、全く違う場所で、全く異なるやり方で、ゆうゆうと1位を仕留めてしまった。

逆に、こんな選挙になったのだから、もはやAKBは何でもありなのだともいえる。

(続く)

Viewing all articles
Browse latest Browse all 2446

Trending Articles